政府が推進する「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指し「認知症になっても安心して暮らせる社会の実現」を目指す取り組みです。
そのために、地域包括ケアの充実や医療・介護体制の整備だけでなく、徘徊などの行動に対して地域全体で見守る仕組みづくりを進めています。
特に「行方不明事案の早期発見・対応」は重要課題の一つとして位置づけられています。
認知症と徘徊の課題
認知症の方は記憶や判断力の低下により、自宅や施設から外に出て迷子になるいわゆる「徘徊」が起こることがあります。
警察庁の統計では、毎年1万8千人以上の認知症の行方不明者が保護願を出されており、そのうち数百名は不幸な結果となっています。またその人数も年々増加しており10年前と比較すると約2倍以上となっています。
徘徊はご本人の生命に危険を及ぼすだけでなく、家族の精神的・身体的な負担も大きいため、社会全体での支援が必要です。
GPSによる徘徊対策
こうした課題に対応する有効な手段の一つがGPS機器の活用です。
GPS活用のメリット
1.位置情報の把握:スマートフォンやパソコンから現在地を確認できる
2.早期発見:徘徊時に迅速な対応が可能
3.家族の安心:外出を完全に制限することなく見守れる
4.自治体の支援:一部の自治体ではGPS端末の貸与や利用料助成を実施
5.介護保険併用:現在の介護保険制度下でも併用が可能で、次期改正時には正式にGPS機能が介護保険で認められる見込みです。
※介護保険機能としてGPSが認められることで、iTSUMO(いつも)もより一般の方に身近に感じていただけるようになるのではないかと考えています。
新オレンジプランとGPSの連動
新オレンジプランの実践では、自治体が主体となって、地域包括支援センターや自治体、警察、民間企業などが連携し、徘徊SOSネットワークを形成している事例が多くあります。
このネットワークにGPSを組み合わせることで、発見や保護のスピードが格段に向上します。
※iTSUMO(いつも)を使用できる自治体もあります。
GPS機器をSOSネットワークで運用することで、
家族がGPSで位置情報を確認⇒発見が難しい場合は自治体の「徘徊SOSネットワーク」に情報提供⇒地域住民や警察と連携して早期発見へ
といった流れが整備されます。
こうして地域で安心して暮らせるようになるというわけです。
徘徊SOSネットワークとは?(詳しく見る)>
まとめ
「新オレンジプラン」において認知症徘徊対策は重要な柱であり、その中で GPSの活用は『欠かせない存在』になりつつあります。
技術と地域の支えを組み合わせることで、認知症の方が尊厳を保ちながら安全に暮らせる社会の実現に近づいていくでしょう。
iTSUMOのGPSも事業開始から約10年、おかげさまで累計3万人近い方にご利用いただいてまいりました。今後ますますその重要性は増すものと思われ、これまで通り懇切丁寧に1件1件「使いこなす」ということを続けていきたいと考えています。

資格:介護福祉士・介護支援専門員・福祉住環境コーディネーター2級
措置時代から介護業界で働き(アラフィフ)、介護保険制度施行後もずっと介護現場に携わってきている。特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・グループホーム・通所介護(デイサービス)・小規模多機能型居宅介護・居宅介護支援(ケアプランセンター)・福祉用具貸与での勤務経験を有し、介護事業所の立ち上げに数件参画。
現在は福祉用具の企画コンサルタントとして、新商品の開発などに携わる傍ら、これまでの介護現場の経験をもとに、介護の楽しさややりがいなどを伝えていきたいと考えている。
研修:認知症介護実践者研修・認知症実践介護リーダー研修・認知症対応型サービス事業管理者研修