介護保険制度は自立支援という概念が根底にあり、あまり家族を重視していない法律なんです。でも、実際の介護では、家族の影響力は絶大で、それは良くも悪くも絶大なんです。われわれ専門家からすると、良いほうに絶大であってほしいのですが、なかなかうまくいかないもので・・・。では、どうすればいいのか
一番は「距離感」だと思います。介護が必要になるとどうしてもご本人との距離感が近くなります。そりゃそうです。介護するということは体に触れたり、指示をしたりするわけですから。それは、介護前の親子関係の距離感と比較すると近すぎるのです。
では、どうすればいいのか、放置するわけにはもちろんいきません。そこで登場するのが専門家(プロ)です。介護はプロの手を借りていい距離感をプロデュースしてもらってください。
私がグループホームにいたころ、認知症の症状が進行し、在宅での介護が難しくなり、疲弊した親子が門をたたいてこられます。その親子関係は見るに見かねるくらいギスギスしています。
入所後、われわれが務めて行うことは、ご本人を理解し、ご本人との距離感を縮め、笑顔を引き出します。
それと同時に、ご家族にアプローチし、ご本人の現在ではなく、昔話などを積極的に聞きます。そうするとご家族も少しずつ感情が戻ってきて、優しい顔に変わってきます。
数か月後には良好な親子関係に戻り、外出を楽しまれたり、外泊や逆に日曜日の昼間にご利用者のお部屋で一緒に昼寝をされていたり・・・。そういう光景が一番やりがいにつながります。