認知症徘徊GPS機器iTSUMOの進化についてお話ししたいと思います。
約10年前、NTTドコモが子供の誘拐防止対策で開発したGPS端末を、徘徊対策で使いたいと提案して生まれたサービスがiTSUMOなのですが、そこから進化がはじまりました。
防塵防水機能と回線が4Gへ
当初は3G回線を使用しており、GPSの精度や防水性能も現在ほどではなかったのです。そして3G回線停波に伴って第2世代 iTSUMO2 へ移行します。
精度のアップ
ここでGPS精度もみちびきを採用することによりアップし、防水防塵性能も世界最高水準にレベルアップしました。
精度についてはこちら>
ソフトの改善
そして今回、iTSUMO3をリリースするにあたり、ハードではなくソフト面でのバージョンアップを行っております。
具体的には、
〇高齢者や機械が苦手な人でも直感的に操作ができる専用アプリを開発。
・まず、初期設定にかかる所要時間を大幅に短縮させ、使用時に操作もワンタップするだけでほしい情報が手に入るようにしています。
・また、これまではできなかった複数人同時ログインを可能に
・1台のGPSにつき見守れる人の数の上限撤廃
・エリア設定可能数の増加など
より個別に設定ができるようにしています。
・GPSに振動が少しでも加われば5分に1回そのポイントを地図上に打点していきますので、常に最新の情報が表示される。
・移動経路を履歴として一括表示することで行動の経路を把握することが容易にできるようになっています。
※iTSUMO2でも機能として 振動感知機能を使用すれば通知を送ることはできましたが、そもそも地図上に打点しないので、履歴で確認することが難しかったのです。iTSUMO3はアプリで一括で見れるのが特徴です。iTSUMO2で、高齢者で履歴まで確認してという人はおそらく皆無だったと思います。
充電池の改善
充電の持ちについてです。iTSUMO2のように必要時だけ稼働ではなく、iTSUMO3では振動があるたびに稼働することで、本来は電池の持ちが悪くなるのですが、省電力仕様を組み込むことで、平均するとこれまでよりも2倍程度の電池もち性能となっています。
具体的には通常は1週間程度、ほとんど使わなければ1か月以上持ちます。
※電池残量の低下に対しては5段階で通知が届く仕様ですので、充電忘れを防ぐこともできます。
※スリープモードもiTSUMO3から改善され、消費電力を抑制に貢献しています。
充電と電池残量についてはこちら>
このように、iTSUMO2でこれまでできなかったことを全部詰め込んで、使いにくかったところを全部改善したのがiTSUMO3となっています。
正直、iTSUMO2でも便利だなあと思って使っていたのですが、iTSUMO3ができて一度使ってしまうと、決して元には戻れないですね。
さて、この先の開発について少しふれておきます。GPS機器の開発は日進月歩、ものすごい勢いで進んでいます。
次期モデルを開発するとなるともちろん次世代を見越したものになると思っています。
次世代GPSはこうなる(予想)
・電池の高性能化
電池です。現在主流となっている電池は気温差で性能が変わる率が大きいものなので、この点は改善できるものが欲しいですね。
また、発火などの危険性も言われていますので、その点も耐用温度の高いもので安全性の高い電池の開発が進めばよいなあと思っています。
・小型化・軽量化
GPS端末のサイズは電池の大きさによるもので、電池が小型化され、さらに省電力仕様になれば小型化は可能だと考えています。
もっと小型化・軽量化は可能だと思うのですが、それでもシート型くらいまで薄く軽くなるにはまだまだ時間がかかると思います。それまではどう所持してもらうかという悩みは尽きないということです。
・AI+IoT
iTSUMO3では1日当たりの移動履歴を確認することができ、どう行動したのかがわかる仕組みがありますが、将来的にはAIにより徘徊予測や、仮に所持しなくて行方不明となった場合も、この履歴をもとに行先予測を示してくれたり、各種センサーの情報をもとに、認知症の進行とADLレベルの相関関係や行動半径の分析など認知症徘徊についての研究も進むのではないかと予測されます。
・回線(5G/6G)
現在回線は4G(LTE)回線を使用している機器がほとんどなのですが、今後は5Gや6Gのような超高速通信に対応するようになると思われます。通信する情報量は少ないので、現在でもそれほど時間がかかるものではないのですが、よりリアルタイムの情報収集が可能になると思います。また、GPS側にマイクやカメラなどの機能が付き、その情報も付加してより捜索が容易になるそんな時代も予測されます。
最後に
最後に、介護保険の存在ですね。認知症徘徊という社会問題を解決できる可能性がGPSにはあると感じており、これを介護保険でどこまでカバーするのかということだと思います。我々メーカーは何を求められているのか?国からメッセージを発信していただければ、と思っています。
これからも「認知症の当事者と家族が、望む暮らしを継続できる」このことが目標でありゴールであると考えており、実際に使用される方々のご意見も伺いながら開発していきたいと考えています。

資格:介護福祉士・介護支援専門員・福祉住環境コーディネーター2級
措置時代から介護業界で働き(アラフィフ)、介護保険制度施行後もずっと介護現場に携わってきている。特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・グループホーム・通所介護(デイサービス)・小規模多機能型居宅介護・居宅介護支援(ケアプランセンター)・福祉用具貸与での勤務経験を有し、介護事業所の立ち上げに数件参画。
現在は福祉用具の企画コンサルタントとして、新商品の開発などに携わる傍ら、これまでの介護現場の経験をもとに、介護の楽しさややりがいなどを伝えていきたいと考えている。
研修:認知症介護実践者研修・認知症実践介護リーダー研修・認知症対応型サービス事業管理者研修





